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妊娠に伴う呼吸器系の変化

呼吸運動とは、肺を拡張、収縮させて肺内の空気を更新させる運動です。この呼吸運動は肺が自力で行う運動ではなく、肺を包んでいる胸郭と横隔膜の拡大と縮小によって、他動的におこなわれています。
また、肺は予備能力がきわめて大きい臓器で、呼吸機能も妊娠・分娩に対する適応性が高い臓器です。
妊娠は、@子宮の増大による横隔膜の挙上、A増加するプロゲステロン、B酸素需要の増加などの変化をもたらすことにより呼吸器系に影響を及ぼします。

妊娠に伴う呼吸器系の変化解剖学的変化
妊娠経過に伴い、子宮は次第に増大し、子宮底が上昇します。
増大する子宮の圧迫によって横隔膜は次第に上昇し、非妊時と比べると約4p挙上します。しかし増大した子宮の圧迫によって、横隔膜の可動範囲が制限されることはなく、通常の呼吸状態の横隔膜の運動範囲は、かえって非妊時と比べて約1.5p増加します。
妊娠中、胸郭の変形もみられます。妊娠中には胸部横径は約2cm拡張し、胸囲は約6cm増加します。肋骨の下部は平坦化し、肋骨角度は増加します。これらの変化は子宮による圧迫が起こる前から始まっているといわれています。

妊娠に伴う呼吸器系の変化排気量と換気機能
最大限の吸気を行ったときの肺内ガス量を全肺気量という。肺活量とは吸入、あるいは呼出により肺から出入し得る最大のガス量のこと、1回換気量は各換気周期において吸入あるいは呼出されるガス量をいい、、予備呼気は呼吸基準位より呼出し得る最大ガスをいう。
○妊娠中の最も重要な肺気量の変化は、予備呼気量の減少に伴って1回換気量が30〜40%増加します。
○肺活量と予備吸気量は妊娠による大きな変化はなく、予備呼気量が約20%減少します。
○横隔膜の挙上により、予備呼気量が約20%減少するため、全肺気量は約5%減少します。
○予備呼気量および残気量がそれぞれ約20%減少するため、両者の和である機能的残気量も約20%減少します。○妊娠中には1秒量(呼気はじめから1秒間に呼出される量)や1秒率には大きな変化はなく、気道抵抗はむしろ減弱します。
○末梢気道の機能は妊娠による変化は少ない。

妊娠に伴う呼吸器系の変化妊娠に伴う内分泌的な変化
正常な呼吸運動は不随意運動です。無意識的に、脳内の神経刺激が肋間筋、横隔膜などに伝わり、胸郭運動が行われています。
この呼吸中枢の活動を制御するもっとも重要な因子は、血液中の二酸化炭素濃度です。この濃度が高いと呼吸中枢は刺激され、低いと抑制されます。
妊娠中は基礎代謝と体表面積の増加によって、酸素消費量は非妊時に比べて約20%増加し、これに伴い二酸化炭素の産生量も増加します。
妊娠中、呼吸数には変化がみられませんが、1回換気量は増加します。この変化は妊娠中に増加するプロゲステロンによるものと考えられています。プロゲステロンによる呼吸中枢における二酸化炭素感受性が増加するため、1回換気量の増加が起こるといわれています。妊娠中はこの反応が強く現れ、動脈血中の二酸化炭素分圧が1mmHg増加すると、1回換気量は非妊時では約1.5/L/分増加しますが、妊娠中は4倍の約6L/分増加します。

妊娠に伴う呼吸器系の変化妊娠中の肺機能
妊娠中には解剖学的、内分泌的な変化によって肺機能(呼吸機能)の変化が起こります。非妊時と比較して、妊娠中の呼吸数には変化がみられませんが、1回換気量が約50mLから約70mLに増加するので、1分間あたりの換気量(分時換気量)は約7.5Lから約10.5Lに増加します。
この増加は妊娠初期よりみられます。妊娠後半になると、子宮の増大による横隔膜の上昇によって、肺実質の体積が減少するため、全肺気量は約4200mLから約4000mLに減少します。
双胎では単胎よりも子宮が増大するため、機能的残気量の減少は約30%とさらに大きくなります。

妊娠に伴う呼吸器系の変化血液ガスの変化
妊娠中の血液ガス所見の特徴としては、呼吸性のアルカローシスが挙げられます。前述したように、妊娠中は二酸化炭素の産生量が増加しますが、換気量の増加によって、相対的に血液中の二酸化炭素濃度は非妊時と比べ減少します。
血液中の酸素分圧は、換気量の増加と二酸化炭素分圧の低下によって非妊時に比べて増加します。
妊娠中は酸素消費量が増加しますが、酸素の取り込み、酸素運搬能の増加、心拍出量の増加によって、それが補われています。
正常妊娠においても、妊婦さんの65〜70%は妊娠中に息切れや息苦しさを感じるといわれています。これは妊娠前半期に多くみられますが、この時期には子宮の増大は軽度であり、子宮の増大が原因とは考えにくく、この生理的な呼吸困難は、換気量の増大のわりには二酸化炭素分圧が軽度の低下にとどまることから起きるではないかといわれています。

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