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妊娠に伴う循環器系の変化

妊娠により、母体循環系にさまざまな生理的変化が生じます。
非妊時では病的ともいえる変化が短期間で出現しますが、これらの変動は多くの正常妊娠の終了後には速やかにもとどおりになり、特別な管理を要しません。

妊娠に伴う循環器系の変化妊娠に伴う循環血液量の変化
循環血液量は、主に血漿成分の増加により、妊娠初期から徐々に増加し、妊娠30週ごろに非妊時と比較して40〜50%近く増加して最大となり、以後、分娩時まで維持されます。血漿成分が約50%増となるのに対し、赤血球量の増加は約30%であるため、妊娠中は相対的に貧血の状態となります。
妊娠中の循環血液量の変化をみてみると、妊娠20週前後から急激に増大し、妊娠30〜32週前後で最大となります。
正常妊娠では、このような変化と同時に、末梢血管抵抗は低下して子宮循環血液量は非妊時の約10倍、腎血流量は約30%増加します。この循環血漿量の増大は妊娠末期まで維持され、分娩とともに減少します。

妊娠に伴う循環器系の変化妊娠中の母体心拍出量の変化
妊娠中の母体心拍出量は、妊娠28〜32週をピークに約30〜50%増加して、分娩時まで維持されます。ピーク時には非妊時と比較して4.5L/分から最大6.0L/分まで増加するといわれ、その増加率のピークは二峰性をしめします。
心拍出量の増加率は妊娠初期にもっとも顕著に観察され、2度目のピークは妊娠20〜24週に認められ、分娩時まで維持されます。
心拍数は非妊時と比較して10〜20bpm程度上昇するといわれ、妊娠週数に比例して増大し、産後の循環血液量の減少に伴い、心拍数も減少します。
1回拍出量の増加は、末梢血管抵抗の減少、母体体重増加、時間当たり母体代謝量の増大、循環血液の増大などによるといわれていますが、妊娠中期末にはピークに達し、妊娠後期には減少します。
妊娠初期にはおもに1回拍出量の増加により、妊娠後期では1回排出量、心拍数とも増加することにより、心拍出量が増加します。
妊娠注に増加した心拍出量は、分娩中にはさらに増加し、妊娠末期と比較して分娩第1期には15〜30%、分娩第2期では45%増加するといわれています。これらの変化は分娩に伴う興奮や不安、痛みによる交感神経の刺激によると考えられています。

妊娠に伴う循環器系の変化妊娠中の血圧の変化
妊娠中は、循環血液量や心拍出量が増加するにもかかわらず、動脈血圧は低下します。これはプロゲステロンが生理的に増加するためで、その末梢血管拡張作用の影響で末梢血管抵抗が低下し血圧は低下します。これは妊娠に伴う母体循環系の変化のもっとも特徴的な減少の一つです。
妊娠初期から妊娠中期にかけて収縮期圧で5〜10mmHg、拡張期圧で10〜15mmHgの血圧低下がみられます。その後、妊娠後期にかけて非妊時のレベルまで上昇します。プロゲステロンの血管拡張作用は子宮血管でもっとも顕著に認められ、避妊時の子宮への血流量は全心拍出量の約2%であるのに対し、妊娠後期では全心拍出量の約17%となります。
このように子宮血管床はプロゲステロン作用によりもっとも血管抵抗が低い状態となっているため、子宮の血流量は体血圧に依存しています。
したがって、妊娠中の血圧が非妊時より高い場合には、たとえ高血圧の領域に入らなくても異常と考えて注意が必要と考えられています。

妊娠に伴う循環器系の変化体位による心機能の変化
妊娠中の姿勢は母体の心機能に影響し、心拍出量、心拍数、1回拍出量、血圧ともに、仰臥位、側臥位、座位、立位で大きく変化します。
心拍出量に関しては、最大の心拍出量が得られるのは左側臥位であり、とくに妊娠末期では増大子宮が下大静脈を圧迫する状態となる仰臥位と、心拍出量にし毎分数1Lの違いが生じるため、仰臥位低血圧症候群と呼ばれます。めまい、嘔気、失神など症状の発生に、とくに注意が必要とされます。この現象は妊娠24週ごろより認められ、妊娠38〜40週にもっとも大きく現れます。しかし、多くの正常妊婦さんでは仰臥位のときでも末梢血管抵抗の上昇によって代償されるため、極端な低血圧は起こりにくいとされています。
また、妊娠中の姿勢によって変化する、増大した妊娠子宮による圧迫は、静脈系のみならず動脈系にも影響を与えます。すなわち下行大動脈が圧迫されることにより、上・下肢の血圧に格差が生じます。この格差は座位ときにもっとも高く、仰臥位のときには低くなり、また、側臥位の場合、身体の下側になった腕と上側の腕では収縮期圧が異なります。
これらの変化の結果として、正常妊娠の場合でも息苦しさや動悸の訴えが生じることもまれではなく、このような場合には側臥位とすることで心拍出量、血圧ともに低下すると報告されていることから、体位変換を行うことも対応の一つといえます。

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